私が暖簾(のれん)をはじめて買ったのは大学生の時でした。六畳一間の狭いワンルームアパート(とてもマンションとは呼べない)での一人暮らし。味気のない玄関ドアと脱ぎ散らかした靴がどこからでも目に入ってしまう日々に嫌気を差し、近くのホームセンターで暖簾を購入し、目隠しとして使ってみました。お金がない学生時代。数百円の安い暖簾で、今となっては模様も覚えていませんが、それでも玄関ドアや靴が目に入らなくなり、少し気持ちが落ち着いたのを覚えています。
暖簾の歴史いついては諸説ありますが、平安時代には日本に存在していたと言われています。暖簾という言葉が使われるようになったのは鎌倉時代の末期。禅宗と共に中国からもたらされた用語で、暖かい簾(すだれ)という意味だったそうです。元々は、冬場の寒さを防ぐために禅堂の入り口に掛けた簾に綿布を重ねたものでしたが、出入り口に掛けられる暖簾状の布は、この時代を境に「暖簾」として親しまれるようになりました。中を割って人が通り易くした工夫は日本独自のものだとか。元々は商家の入り口に用いられた暖簾ですが、今では部屋の間仕切りやインテリアとしても当たり前に使われるようになり、世界中で認知されてきているようです(何とあのIKEAでも売っている)。
「何となく部屋が殺風景だ」「オープンキッチンはいいけど、キッチンとリビングにさり気なく境目が欲しい」。そんな時にサラッと掛けるだけで雰囲気を一変させてくれるアイテム-暖簾。今日は伝統工芸を用いながらもシンプルな仕上がりの「阿波藍染の暖簾」をご紹介します。
継承された伝統の技で染め上げられた本藍染の暖簾。徳島の伝統工芸である藍染の暖簾は、何度も何度も藍釜につけ込んで染め上げるその深い藍色が特長です。藍師が精魂込めて作り上げた「すくも」の天然染液に『入れて・出して・水で洗って・藍に浸ける』を繰り返し色を重ね、一枚一枚手絞り・手染めすることではじめて完成するこの作品。大量生産品ではないため、どれをとっても色や柄が全く同じものはありません。
サイズ86 x 120cm。素材麻100%。素朴な麻布と藍の青色が絶妙な調和を生み、本物だけが纏うオーラさえ感じます。また、つなぎ合わせ部分は見た目にも美しい”千鳥掛け”で編まれており、和の”活”を感じる仕上げとなっています。
継承された伝統の技で染め上げられたこの本藍染の暖簾。徳島に大正元年創業の岡本織布工場さん(綿織物の織元として現在に至っている)による作品です。飾られる空間をワンランクもツーランクも上級に押し上げるだけでなく、時を経て変化する天然藍の風合いをお楽しみいただけます。和のテイストをさり気なく住空間に加えてみてはどうでしょうか?