奈良筆(ならふで)は奈良県で作られる筆の総称です。仏教の伝来と共に日本へは6世紀頃から中国より筆や墨が入ってくるようになりましたが、日本で筆が作られるようになったのは、空海が遣唐使として唐へ渡った際に筆作りの方法を学び、それを持ち帰り大和国(現・奈良県)で筆作りを伝授したことが起源と言われています。空海から伝授された大和国の坂井清川という人物が作った筆が奈良筆の始まりとされており、彼が作った筆は、時の天皇である嵯峨天皇にも献上されました。また、東大寺の大仏開眼供養会(大仏像の完成を記念し大仏に目を書き入れる儀式)にも奈良筆が用いられました。日本では京都筆、豊橋筆、越後筆、江戸筆、熊野筆など様々な産地がありますが、全てこの奈良筆が起点となっています。
奈良筆の素材には、羊、馬、鹿、狸、イタチ、テン、ウサギ、リス等の柔剛の程度がよく墨含みの良い獣毛が使用されていますが、獣毛の種類はお客様からの筆に対する要望を聞いたうえで選定されるのが奈良筆の特徴です。選毛から完成までには10数種の工程を経ますが、全てが一人の職人により行われます。弾力、強弱、長短等を精巧に組み合わせてゆく製筆技術は、長い間の伝承にて培われたもの。歴史と伝統に培われた匠の技で高品質の筆が今も生産されており、書家や専門家を中心に現在でも高い評価を受けています。
参照元:
日本伝統文化振興機構ホームページhttp://www.jtco.or.jp/japanese-crafts/?act=detail&id=148&p=29&c=12